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〈想い風〉 高江の闘いが見えない理由

平安名純代

「奇跡が起きた。われわれの誇りを賭けた闘いが実を結んだのだ!」

 

12月4日。米陸軍省がノースダコタ州の石油パイプラインの建設計画の休止を決定したという報せがもたらされると、厳寒のなかで寝泊まりしながら抗議してきたアメリカ先住民や環境活動家らの間から大きな歓声が巻き起こった。

 

涙を流しながら抱き合って喜ぶ瞬間を米メディアは「歴史的勝利」と大きく報じたが、水と神聖な土地を汚させてはいけないと立ち上がったスタンディングロックスー族の闘いは、初めはごく少人数の孤独なものだった。

 

メディアは関心を示さず、裁判を起こしても訴えは退けられる。同部族の代表は9月、ジュネーブの国連人権委員会で「合法だからといって先住民の権利を奪う計画が許されてはいけない」と計画の中止と先住民の主権を尊重するよう訴えたが、事業主は計画を諦めず、警察当局は非暴力の先住民らに犬をけしかけ、銃を突きつけるなどの過剰な武力を行使。そうした実態がソーシャルネットワークで広まり、バーニーサンダースやレオナルドディカプリオら著名人らが次々と計画の反対を表明。注目度は次第に高まり、ホワイトハウスには計画中止を求める約1万本を超える抗議の電話や約40万人の署名が届けられ、約2千人の元軍人らが「人間の盾になろう」と現地入りするなど抗議活動に勢いがついた。

 

スタンディングロックスー族の代表は、強制立ち退き命令の最終期限日にもたらされた勝利に「オバマ政権の歴史的な決断」と敬意を表したが、トランプ次期大統領がこの決定をくつがえす可能性は十分にある。

 

今後の展開は不透明だが、孤独だったアメリカ先住民の闘いは、全米が注目する「見える闘い」へと変化した。一方で、同じく市民が権力と対峙する高江ヘリパッド建設をめぐる闘いは、米国では「見えない闘い」のままだ。

 

ジュネーブの国連人権理事会で昨年9月、米軍が沖縄の土地を強制接収した歴史や自己決定権を主張した翁長雄志知事は、高江の計画を「苦渋の選択」と事実上容認。その後の記者会見や県議会の答弁で「容認したわけではない」と釈明するが、高江で闘いを続けている人々への言及はない。

 

知事の苦しい釈明は、どうやら国際社会では通じないようだ。米政府関係者らは「重要なのは、容認と明言したかどうかではなく、計画に反対していないということだ」と解釈する。

 

「奪われた土地」を返還する式典ももうすぐだ。すでに米メディアは「最大規模の返還」と米政府の取り組みを評価している。

 

高江を「見えない闘い」にしているものは何なのか。「高江を守れ」と日米両政府に立ち向かう代表が不在な中で、誇りを賭けた人々の闘いは今も続いている。

平安名 純代(へいあんな すみよ)沖縄タイムス米国特約記者

沖縄県那覇市出身。1995年渡米。日英両語のロサンゼルス日系紙「羅府新報」でカリフォルニア州議会やロサンゼルス市議会などの担当を経た後に副編集長。2010年12月から現職。米軍普天間飛行場の移設問題をめぐるラムズフェルド元国防長官との単独会見などの一連の取材で12年に第16回新聞労連ジャーナリスト大賞優秀賞を受賞。